後海村

波頭に乗る自由の息吹
後海は独特な半月形の湾を持ち、一年を通して波が安定しているため、初心者から上級者まで、自分にぴったりの波を見つけられる。この特長が、後海を三亜を代表するサーフコミュニティに育て上げた。若いサーファーたちがボードを抱えて路地を抜け、通り沿いには個性豊かなサーフショップ、独立系カフェ、クラフトビールバーが並ぶ。アメリカンレトロから田園風のセレブリティスタイルまで、店主たちは夢をそれぞれの空間に詰め込んでいる。ここでは生活に決まったリズムはない。海辺のカフェで一日中ぼんやりと過ごし、遠くを行き交う船を眺めながら、後海にしかない「チル」な空気を感じることができるのである。
素朴な漁村の静寂なB面
トレンドの外皮を剥がせば、後海は依然として無垢な小さな漁村の姿を留めでいる。海沿いに建つ古い家々は静かな時の流れを纏い、軒先では昼下がりに猫がまどろみ、村民たちが路地口で日常の会話に興じでいる。夕焼けが漁村の隅々に優しく降り注ぎ、広く柔らかな砂浜がその姿を現す頃、後海は最も穏やかな表情を見せる。子供たちが犬を連れて波間を駆け回り、大人たちは砂浜に座ってピクニックをしながら夜の訪れを待つ。ここには都会の隔たりはなく、人と人との最も素朴な繋がりだけが息づいでいる。
水上生活者(タンカ)の風味と海辺の夜話
後海の夜は、ロマンチックで情感に溢れでいる。昼間の穏やかさとは異なり、夜の後海は灯りが彩りを放つ。海岸沿いのバーからはライブバンドの歌声が流れ、暖かな灯りと灰青色の夜空が織りなす艶やかな風景が広がる。人々は砂浜のキャンプファイヤーを囲み、心を開いて波の音に寄り添いながら深夜まで語り続ける。そして舌鼓を打たせるのは、最も本場ならではの水上生活者(タンカ)料理の海の幸である。海と共に生きる水上生活者の人々は、毎日水揚げされた新鮮な素材にこだわる。茹でたり蒸したりした料理に、黄唐辛子と小粒ライムで作られた特製のタレを添えれば、食材の甘みと旨みが口中に広がる。後海では、美食は腹を満たすだけではなく、生活への愛そのものなのである。
